English Version
やおい漫画と男性を性的に描いたその他の作品

江戸時代(1615-1868)を通して、春画においては、男色という成人した男性と若衆(12歳から19歳までの生物学的男性)との関係についてしばしば描かれた。多くの歴史家たちは、若衆のことを第三の性とみなそうとしたが、しかし最近まで男色は同性愛の初期の兆候であると思われていた。20世紀初頭に人類学者の岩田準一(1900-1945)はこのテーマに関して広範囲にわたる調査を行い、「本朝男色考」(1930-1931)と「男色文献書志」(1973)を出版した。

20世紀において、ホモセクシャルに関する議論は、言うまでもなく単に歴史上の学問的な討論に限られることはなかった。1971年には「薔薇族」が日本のゲイの男性の為の月刊誌として発行され、それが最初の商業誌であった。その三年後「さぶ」がSMなど、より硬派な漢・野郎の観念を含むハードコア路線の雑誌として出版された。男性同性愛を描いた漫画が1970年代に登場すると、それ以降その人気は急上昇した。

商業的に最も成功したゲイを描いた漫画は皮肉にも女性漫画家によるもので、特にそのターゲットは同性愛者ではない女性であった。もともとやおい漫画、もしくは少年愛、また最近ではBL(ボーイズラブ)として知られているこのジャンルには、50万人をこえる読者がいる。文化史研究科のマーク・マクレランドは以下のように説明する:

男女の役割がきちんと定められてきた日本社会において、性別の概念にとらわれない(上記のやおい、少年愛、またはBL漫画のような)女性向けのポップカルチャーは安心できる場所を提供してくれる。大勢の人が想像する女性の性に関するアイデンティティーは二つしかなく、一つは性産業に従事する、もう一つは母性を持つことで、だからこそ、性別の概念にとらわれない同性愛漫画のようなファンタジーに人々は魅力を感じ、その生産(漫画制作)と消費(漫画の購買)の両方に走る事は、驚くべきことではない。

― マーク・マクレランド「近代日本における男性同性愛:文化神話と現実社会」(2000)

また、今回の展示ではゲイの男性読者のための男性同性愛を描いた作品に加え、女性の為に制作されたゲイではない男性をセクシーに描いた作品も展示されています。