丸尾末広(1956年生)
新ナショナルキッド

1999年
(TD 2014-81-19)

学校でいじめをしている子供達が乗った軍用機に攻撃されるという悪夢で目覚めた少年が、 襖ごしに寝室の外を見ると、そこには隣の部屋でBDSM(嗜虐的性向)に耽っているカップルがいた。この短編漫画においても丸尾の映画的な表現テクニックは素晴らしい。少年が襖越しに中を覗くと(左ページ、右上)彼が最初に見たのは一筋の狐火であった。この手の超自然現象は19世紀の浮世絵によく見られる。(左ページ、左上)しかしながら、丸尾はこの真ん中のコマにおいて、このシーンで何が起きているかを説明するために引きで描いているので、我々はこの狐火が実はサディスティックな恋人により縛られた裸の女性の上にしたたる溶けたロウソクの滴であるとわかる。(左ページ、下)丸尾により描かれた世界では、大人達の性癖は悪夢のように純粋無垢な子供達を不安にさせる。