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吉原遊郭:伝説の起源、そこに住む人々、そして受け継がれていくもの

江戸時代(1615-1868)、現在の東京近郊に位置した吉原は、政府公認の遊郭であった。売春の他に、吉原は客達に他の地域では禁止されていた贅沢な服装を纏う機会を与えていた。ほとんどの無許可の遊郭地域には無かった正統な文化的イメージを吉原に与える為に、吉原の経営者達はそこに住む遊女達に日本の文学的黄金時代である平安時代(794-1185)の宮廷文化の真似事をさせた。これらの遊女達は、宮廷風の着物を着ただけでなく、源氏物語(11世紀)の登場人物が生まれ変わったかのように古典的な詩を暗唱するように訓練された。

吉原の遊郭が最も繁栄した時期は17世紀と18世紀前半であり、その時期、遊女達は社会的ヒエラルキー(階級)を形成していた。その階級の最上部には太夫とよばれる高貴で魅力的な遊女がおり、客達は彼女とただ口をきくだけのために、数ヶ月分の稼ぎを払っても惜しくないと思っていた。菱川師宣(1631-1694)のような浮世絵師達は彼女達を美の手本として、その名を後世にまで伝えた。

だが、時が経つにつれ、吉原は無認可の遊郭との競争に苦しむようになり、次第に今まで以上に派手になっていった。その社会秩序は劇的に組み替えられ、その代表であった太夫が花魁に取って代わられた。花魁は、禿を従え入念に着飾り、また浮世絵の題材としても人気を博した。だが悲しい事に、これらの画は実際の吉原の厳しい経済を偽って描かれており、20世紀には吉原はうわべだけの文化的要素を失い、とうとう1958年には閉鎖された。

安野モヨコ(1971年生)の「さくらん」は19世紀の吉原で成長した少女を描いた漫画で、また江川達也(1961年生)の「源氏物語」は11世紀の古典文学をエロティックな手法で表現し、岡崎京子の漫画「pink」現代の東京で売春をしている主人公の日常を描いた作品である。