1868年の明治維新以降の10年間、伝統的な浮世絵の製法は日本美術にいまだ影響を与え続けていた。例えば橋口五葉(1880-1921)の版画は、版画のデザインをする絵師(五葉自身)、彫師、摺師、版元の共同作業であることを表している。それと同時に外国人にもアピールする為に、五葉のような絵師は、とりわけヨーロッパのモダニズム絵画の流行を反映した現実主義、なかでも解剖学の要素を作品に取り入れている。
20世紀後半までには、伝統的な版画の人気は大幅に衰退したが、近年、寺岡政美(1936年生)は近世の版画技法の復活を奨励し、彼の作品を通して木版画工房との共作で生まれた素晴らしい職人技能を実演した。