えすとえむ(1981年生)
「equus」 第三話より原画 パネル1-2
2011年
(L.2014-51.01a-b)
漫画「equus」(2011)で、えすとえむ(1981年生)は性的志向に関する問題を語るために人間とケンタウルスが共存する世界を描いた。えすとえむのケンタウルスは、同性愛の男性の喩えとして描かれ、互いの恐れ、敬愛、または欲望を他人に感じさせながら生きるのが彼らの運命なのである。
竹宮ジンやツバキアンナ(1970年生)と同様に、えすとえむも彼女の漫画をコンピューターグラフィックソフトウエアで描き、原画を手書きし出版の為にその画像をスキャンまたは写真に撮るという作家達とは違う手法をとっている。このような現代技術の発展により写真とイラストレーションの区別がつきにくくなってきた。
この「equus」(右上から左下へ読む)のデジタルスケッチでは、異性愛の男が「彼らはその森に住んでいた」と物思いにふけながら馬に乗り森を駆けている。大きな音に驚き、彼の馬が暴れ逃げ出し、馬から落ちた彼は、 親密な雰囲気の二匹のケンタウルスの間にうっかりと入ってしまったことに気づいた。最初は恥ずかしがり混乱した彼であったが徐々に彼らに引き込まれ、間もなく彼らの熱っぽい性行為に加わった。その場に戻ってきた男の乗ってきた馬は三人を見て疎外感にさいなまれ、「迎えに来たのに・・・」と悲しげに思っている。
竹宮ジンと同様に、えすとえむも複数の長めのコマ割をし、ページを区切ることにより物語のペースを速めたり、ドラマティックな緊張感を演出している。また、この作家はシンプルな色使いでもしられ、それはイギリスのイラストレーター、オーブリー・ビアズリー(1872-1898)などアール・ヌーヴォーの作家達の作品を思い出させる。