丸尾末広(1956年生)
「あらかじめ不能の恋人達」より原画
1983年
(TD 2014-59-03)
作家自身による表現主義や超現実主義の映画好きが反映され、この作品は映画のような素晴らしい作りとなっている。前半部分(1〜4枚目)では、一人の登場人物の気が狂っていく様子を見る事ができる。 首を固定する装具と機械の手で美しく飾られた謎の魔性の女が描かれたタイトルページ(1枚目)に続いて、二人の登場人物が紹介される(2枚目)。横たわる若い男の死体と彼の死を嘆き悲しむ恋人。丸尾はこの作品では気味の悪いクローズアップを通して魔性の女のとった狂った行動を描いている。死んだ男の柔らかい陰茎、無表情の女性、そして男の無防備な左目。そして4枚目の原画で彼女は、想像を絶する方法で恋人の亡骸を冒涜する。
物語の後半部分(5〜8枚目)の構成は前半部分に類似している。一連の美しい妄想(5枚目)の後、彼女は自傷行為へと陥っていく(6枚目)、そして彼女のボーイフレンドが裏切り行為をしていたと気づいた時(7枚目)彼女の暴力はクライマックスを迎える(8枚目)。
「あらかじめ不能の恋人達」と、その他の丸尾作品に関しては、展覧会場内のPodcastをご覧ください。