日本美術におけるグロテスクなものを主題にした作品を調べると、早くは12世紀頃の物語絵巻にある身の毛もよだつ恐ろしいシーンにまでさかのぼる。そしてその後19世紀にはグロテスクさは美しいものとして、しばし復活した。月岡芳年(1839−1892)の「英名二十八衆句」(1866−1867)や歌川(落合)芳幾(1833-1904)の作品は「無惨絵」の中でも特に印象深い。
江戸時代(1615−1868)では、エロティックさとグロテスクさは、同じ感覚を持っていた。奥村政信(1686-1764)のような絵師達は華やかな若い男性を追い求める中年の後家をユーモラスに、しかし精神的に不安定に描き、そして1世紀後、柳川重信(1787-1832)は凶悪な性的暴行を描いた。
1930年代にはエログロナンセンスという言葉が、作家平井太郎(1894-1965 ペンネーム 江戸川乱歩)により、彼の作品を表現する為に作り出された。太平洋戦争(1941-1945)後、佐伯俊男(1945年生)や丸尾末広(1956年生)などの漫画作家によりエログロのジャンルは復活し、それ以降、彼らの作品は驚異的な人気を誇っている。