荒木 経惟(1940年生)
無題

1989年頃
(L.2014-55.02)

橋口五葉(1880-1921)の作品同様、ヨーロッパの絵画様式の影響を明らかに受けている荒木の写真では、モデル達は立体感を演出する短縮遠近法を利用したポーズをし、また明暗法を用いて明と暗の対比により作品に演劇性をもたせている。この作品ではモデルのポーズ、波打つシーツ、構図によって生じたドラマティックな影など、アンドレア・マンテーニャ(1431-1506)の描いた「キリストの嘆き」(1480年頃)との類似点が多く見られる。荒木は、このような宗教美術と同じように、作品の見かけだけで倫理的価値観を定めたり、その作品を「神聖」か、または「冒涜」なのかと簡単に分けないようにと我々に言及しているのではないか。