寺岡政美(1936年生)
セラと蛸/セブンスヘブン

2001年
(31304)

蛸と絡む女性の画とは、14世紀の文学を起源とし、その後、春画の歴史において最も有名な作品へと発展した。寺岡のこの作品はその葛飾北斎の浮世絵が持つ軽い冗談のようなトーンをある程度真似ている。 作品の上部に書かれている会話の中で、蛸は自分が経験不足で不器用な恋人であると明かしている。

蛸:そんなポーズをとっているあなたは美味しそうですね。私が感じているこれは、あなたのクリトリスですか?

セラ:ねぇ、そんなに急がないで!ゆっくりと!あなたが今私のクリトリスでしていることをできるだけ楽しみましょう。

蛸:ここであってますか?もっと中?ここは?それともここ?

セラ:あなたの吸盤は弱すぎるわ。できるだけ強く、あなたの好きに吸ってみて。

—寺岡本人による翻訳 (2014)

しかしながら、このユーモアーの根底にはエイズ危機への厳粛な忠告が含まれている。女性は右手に女性用避妊具を握り、その他にアーティストにより漢字で番号がかかれた7つの使用済みのものがこの場面中に描かれている。 HIV感染は現代社会において差し迫った危機である。それゆえ、その問題をこのように気さくに語ることは、エイズ危機に対する効果的な保護手段として最も有効であると感じる人もいる。「セラと蛸/セブンスヘブン」のようなエロティックアートは政治的な期待や責任をも担っていると言えるであろう。江戸時代の春画絵師たちは、そんな事は考えもしなかったであろうが。

東京の高見沢木版社との共同作業で、29段階に渡る摺りの作業行程を通し、この木版画の作り方をビデオ(こちらをクリックして下さい)にて紹介しています。 また寺岡作品の作成過程が目で見てわかる、何種類かのスケッチ事前調査注釈付きの色校正摺りも紹介しています。