春画の美的発展:葛飾派と歌川派
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17世紀後半から18世紀にかけて活躍した菱川師宣(1618年-1694年)、鈴木春信(1725年頃—1770年)や喜多川歌麿(1753年—1806年頃)らの作品のように、葛飾北斎(1760年—1849年)、歌川広重(1797年—1858年)、そして歌川国芳(1798年—1861年)など19世紀の巨匠と言われる浮世絵師たちは、春画の美的発展を目指し、大胆な作品を制作した。今回の展覧会でも三点展示されている『絵本 ついの雛形」(1812年頃)は、葛飾北斎の描いた春画作品の中で最も有名で、賞賛された春画集である。それは登場人物達のリラックスした雰囲気を保ちつつも、激しく淫らに耽る姿を描き、そして着物の感触など細かい部分を丁寧に描く事により優雅さを作品に与えている。数年後、北斎の弟子の葛飾北嵩(1800年代から1830年代頃にかけて活躍)は『末摘花」(1817年頃)を発表し、明らかに北斎のスタイルではあるが、北嵩自身の個性的で淫らなユーモアーセンスを表現した。

19世紀、春画の領域は歌川派の絵師達により席巻された。春画以外で当時の性文化に関連した作品も含めると、広重、国芳、国貞(1786年—1865年)そして国麿(1830年代から1860年代頃に活躍)や、彼らの師である初代豊国(1769年-1825年)により、この展覧会に展示されている作品のほとんど半分が製作された。それ故に、技術的に凝っていて、内容的にも素晴らしい春画に対する彼ら絵師達の貢献は、たくさんありすぎて簡単にまとめる事ができない。しかしながら、彼らが作品の中で強調した奇抜さをまずは認識すべきである。