性的倦怠期。おそらく19世紀初頭の日本の春画を表現するには、この言葉が一番しっくりとくるであろう。

17世紀に初めて春画が登場して以来、絵画、版画、そして版本において春画は急速な商業的大成功をおさめた。鈴木春信(1725年頃〜1770)、喜多川歌麿(1753年頃〜1806年頃)や、その他の浮世絵の先駆者たちは、春画とは、文化的影響力のある豊かな芸術であり、美的で価値のあるもの、そして単に性を描いただけのものではない、という概念を確立した。

しかしながら、18世紀の後半から19世紀前半にかけて、芸術分野としての春画の目新しさは次第に薄れて行った。そこで春画人気の復活は、葛飾北斎(1760-1849)、歌川広重(1797-1858)、歌川国芳(1798-1861)や、彼らと同世代の新進絵師達にゆだねられた。彼らは日本の性産業メカニズムのような複雑な社会的事柄に加え、性的ユーモアーなど楽天的なテーマに焦点をあてる試みを行い春画人気の復活に成功した。さらには、19世紀の人々にとって、とても魅力的であった超自然現象にまつわる話や外国人なども春画のテーマとしてとりあげている。

「Tongue in Cheek: Erotic Art in 19th-Century Japan – 笑い絵:19世紀日本の春画展」は、春画を通して日本の性文化の発展を探求した展覧会であり、合計三回開催されるうちの、今回は二回目となります。昨年開催された17世紀と18世紀の作品を特集した第一回目の「Arts of the Bedchamber: Japanese Shunga — 閨房の芸術: 日本の春画展」と同じくこの展覧会もジェームス・A・ミッチェナー、マリ・ミッチェナー夫妻のコレクションと、近年新たにホノルル美術館の収蔵品に加えられたリチャード・レイン・コレクションからの名作を中心に構成されています。

「Tongue in Cheek: Erotic Art in 19th-Century Japan – 笑い絵:19世紀日本の春画展」はショーン・アイクマン/東洋美術部キューレーターと、スティーブン・サレル/ロバートF・ランジ財団 日本美術研究者の共同企画です。