我々が想像できない物を芸術によって表現しようとする時、どこからが個人のプライバシーの侵害や、弁解の余地が無いほどずうずうしいもの、そして私的利用となりはじめるのか？おそらく他のジャンルと違い、春画ほどこの質問が問題視されるものはないであろう。そして、その答えは人によって様々であるため、春画を見た際に、良い趣味の境界線を越えていると何人かが感じる作品が必然的にあるであろう。

近世日本の人々にとって、プライバシーの度合いは、現代の西洋社会よりずっと低かった。公共の銭湯などの習慣はあたりまえで、日本の建物は立ち聞きと覗き見が簡単にできる障子のような簡単な素材でできていた。

性行為に関する礼儀正しさも同じ様に今のそれとは全く違っていた。吉原の高級遊女達が客から最高級の敬意と礼節をもたれていた一方、幕府公認ではない遊郭で働く女性や若衆は、無礼な客達に対しても寛容でなければならず、悲しい事に性的虐待は遊女達にとっては避けられない現実であった。